ノンリコースローン
今はもう昔の話になってしまいましたが、1980年代末、日本ではバブルが発生して、世間では 「 東京は世界の金融センターになる 」 とか 「 日本は世界を金融支配する 」 と言われました。
日経平均株価も、1989年12月29日には、38,915円87銭と史上最高値をつけたましたが、年明けの1990年1月の大発会から下落しはじめ、また、下落することはないと信じられていた不動産も暴落をはじめ、土地神話も崩壊してしまいました。こうして、平成大不況が始まりました。
日銀や当時の大蔵省の金融・財政政策の失敗により、金融機関は倒産の危機に瀕し、国民は収入の減少に苦しむこととなりました。
住宅ローンを抱えた人には、返済の負担が重く圧し掛かりました。不動産価格が大幅に下落したため、住んでいる住宅を売ったとしても、借入金の返済を賄えないという状況になり、住宅ローン破産が急増しました。
もしここで、 「 住宅ローンが払えないので、住宅は銀行に差上げます。しかし、預金や車やその他の財産は、私に残してください。 」 と言えたら、自己破産までには至らず、その後の生活の再建も、もっと楽にできたのではないでしょうか。
もちろん、今の日本でそんなこと言っても認められません。しかし、欧米諸国では、 「 ノンリコースローン 」 といって、これを認めるのが常識になっています。
似たような状況として、1980年代末から1990年代初期のアメリカも、リストラによってローン支払に窮した人々が続々とマイホームを失うという事態が起きました。しかし、彼らはの多くは、 「 ノンリコースローン 」 のおかげでマイホームを失ったけれども、破産は免れたのです。彼らの多くは、その後の景気回復局面で職を手にし、再びローンを組んで持ち家を手にいれています。
日本は、敗者復活戦のない社会だといわれています。世間では、自己破産に対する見る目は冷たく、そのため破産制度を利用をことを躊躇する人もいます。 「 借りた金はかならず返す 」 と言わなければ人間失格だと思っているようです。
ところで、世の中には、100%の世界はなく、金融の世界も同じです。借金をした人は、全員が必ず借金をとどこうり無く返済できるということは、ありえません。返せなくなった事情はいろいろあるでしょう。失業した、病気で働けなくなった、安易に遊びまわった。その人の責任感や能力の問題も有るでしょう。しかし、結果として、借りた人の何 % かは、必ず返せなくなるのです。
この返せなくなった人をどうするのかは、国家の社会政策としての問題です。返せなくなった人を非難し、重罰を与え、この人からトコトン財産を奪って再起を困難にするのか、このような人を、借金から解放してあげて、また、ある程度財産を残して再起しやすくしてあげるのか、どちらの方法を採るのかという問題です。
日本も遅ればせながら、ようやく問題の本質に気づいたようです。平成17年1月から施行された改正破産法は、不十分とはいえ、破産した後、破産者に残す財産の範囲を広くしています。
今後は、破産を避けるためにも、 「 担保不動産を銀行に渡せば、それで借金から免れることができる。 」 という制度、すなわち 「 ノンリコースローン 」 の制度の確立が望まれるところです。